発行日 2010年10月
発行人 サンセイ「パートナー編集室」
「哀れなるものよ!」
一悪太郎(中野芳男)著
パートナー7月号(48刊)からのつづき
名古屋に於ける十日間の宣伝中も待ちこがれる雨は降らなかった。
日曜も祭日も、ヂリヂリと焼きつく様な太陽に照りつけら真っ黒になって頑張った。学生時代に野球をやった彼にも真夏の直射は左程こたえなかったけれども、僅か一日だけでもゆっくりした休みが欲しかった。
途中チンドンヤの一人が外れ、これを補充しつつ名古屋も終了 豊橋までやって来た。岡田家なる旅館に泊り風呂に入り、三助に背中を流して貰いながら彼はやがて一ヵ月後に来るべき徴兵検査のことを考えていた。検定不合格の彼は若し合格すれば2ヵ年兵役生活を送らねばならない。
俺のこの身体はどうだろうナー
「暑いね、今日は」
「兵士達がかわいそうだノー」
二人のイガ栗頭のオッサンが入ってきた。
「今日は特別暑いですね。貴下は何処からお出でになったのですか」
「ハァ、僕は大阪から来ております」
「あ、そうですか。御当用で?それとも御見物に」
「イエ、ちょっと当用で ビールのことで昨日来ました」
「ビール!いいですね ビールはこんなに暑いと中々お忙しいでしょう」
「イヤ、ナニ、それ程の・・・・・」
彼は冷汗をかいて早々にして引き上げた。
翌朝少し寝坊した彼は約束の八時半までにチンドンヤ連中の勢揃いしている特約店に行けなかった。
朝飯もそうそうに玄関に立ち出でた彼の目に・・・・・軍服姿勇ましき二人の大佐殿が・・・・・
十名余りの下士が二頭の馬を引き、宿の亭主以下居並びこれを送り出している。
二人の大佐とハタッと視線が合った時、
「ヤァ、昨晩はどうも失礼」
「イエ、僕こそ」
「これからお出かけですか」
「ハァ」
「今晩 お暇だったら私の部屋に来ませんか。まだ暫くご滞在でしょう。是非遊びに来給へ」
「ハァ 有難う御座います」
チンヽドンヽチンドンヽ 突如として聞える?の音!
「オヤ、何かな?」
「大将!余りおそいので迎えに来やした」
彼は穴があれば、否穴掘って入りたかった。
「ホゥー 君は中々愉快な仕事をしているね、ワハ・・・・・・・・・・愉快ぢゃ 君、是非今晩僕の部屋へ来給へ!」
「一緒に飲もう。愉快じゃゝ 待っていますゾ」
彼は一言の言葉も発し得なかった。
かくして二人の大佐殿は下士を率いて右へ!悄然たる彼はチンドンヤを率いて左へ!
連日の奮闘か、或いは精神的な大打撃か、
その日遂に彼は照りつける太陽に外れて仕舞った。
人夫に背負われて旅館に帰り、急報の電話を社にかけてことを覚えている。
医者が来て日射病だと診断して行った。
食事はノドを通らなかった。無理に採れば直ぐ吐いてしまうので水ばかり飲んで眠った。
流動物ばかりで生命をつないで居る彼に徴兵検査がやって来た。
フラフラする身体を無理に元気つけて検査場に向った彼は・・・・・・・・・・・・・・
「丙種合格!」
筆にも言葉にも表し得ない彼の感情!
うつろな彼の顔に嬉しいとも悲しいともつかない表情が漂っていた。
回復後、彼はやっと人間並み仕事にありついた。地方にも出張した。
芸者を知った、酒は大いに必要だ、ダンスも、撞球も。
商談を為す時、注文を多く得んとする時、酒と女の必要であること痛切に感じるのであった。
世に禁酒を強制する人がある。酒のよき一面をも知らず。
女!女も其の存在なくして商談を成功に導き得ない。
パートナー50号へつづく
エコキャップ推進運動についての報告
当社では、平成22年3月より「企業の社会的貢献」の一環として「エコキャップ推進運動」に参加しています。この運動の参加目的はペットボトルのキャップを集めることで、「再資源化によるCO2削減」と再資源化で得た売却益を「発展途上国の子供たちにワクチンを贈る」ことです。
そして今まで皆様に協力をいただきました結果(平成22年10月現在)は、下記の通りになっております。
注・・・800個でワクチン1人分・400個で3.15kgのCO2の発生を減らせます。
合計キャップ数(個) 223,360
ワクチン数(人) 279.3
CO2削減量(kg) 1,758
これからも、「捨てるとゴミ、分ければ資源」のスローガンのもとに皆様にご協力頂き活動を続けてまいりますのでよろしくお願いいたします。